架空の物語

架空の現実で起こる日常。

ゆるゆるな公務員 38歳の悩み ①

これは、私の日常化している事である。

 

毎朝、起きる時間は必ず6時42分。

グゥーっと背筋を伸ばし、ふぅ〜っと一息。

今日も1日が始まるのか…何てことを頭の中でつぶやき、カーテンをバンと開く。

いいじゃないか、ドラマを少し意識をしても…

そして、台所へ行きティファールに水を入れ、お湯を作る。

熱々のコーヒーを飲み、食パンはチーン!だ。

トーストにコーヒー朝食は決まってこれだ。

何度読んだのだろう。「メンズノンノ

ファッションと言ったらこの雑誌だろう?

春、夏、秋、冬をトータしている雑誌だと思う。

朝食が終わり、タバコに一本火をつける。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

時刻は7時20分。

着替えをササっと済ませ、7時32分に家を出る。

最寄りの駅まで歩いて約13分といったところだろうか。

会社の到着時間は8時20分。

 

何てベストなんだ!素晴らしい。と自画自賛。

いつでも嫁ゲット出来るであろう。このタイムスケジュール感。

しかしなぜ出来ないのだ。彼女すらも…まぁいいか。とりあえず

 

「いってきます」

 

誰も答えてくれないことにも慣れてきてしまった…寂しさをふと感じることがある。

トコトコと歩き、いつも通りの通い慣れた道を歩いている。今でも思い出す。

いつも通りだったんだ。きっとその日だけのはずだった…

 

駅に着き、改札を抜け3〜4分の待ちだった。遠くの方で電車が見えた。

「そろそろか…」その時だった。

 

「ギュルルルルルルルゥ!!」私のお通じのベルが鳴った。

「おう!こいつは、ヤバい奴だ」一瞬で俺は悟った…

 

今日、この日、ヤバい量の下痢をもらす事になるであろう。

っと同時に、電車が到着してしまった。

トイレに行く。いや行きたい。時よ止まれ!私は、心の中で叫んだ。

時に現実とは、非常なものだ…冷静さを欠き人は判断を誤る…

 

「会社まで我慢してやる」

心に固く決めつけてしまった。

 

まだまだ若いだろう。締まりは健在であろう。

あさはかだった。判断の過ちである。

俺は電車に乗った。完璧となっているタイムスケジュールの為に!

 

電車の扉がしまった。俺は同時に「解放した」

チョロっとではない。ドバッ!バン!!だ。

まるで「ショットガン」をぶっ放した感じだ。

 

確認したいが、これは見事な満席具合だ。無理と判断した。

この時、イメージではあるが、かなり水っぽい感覚を得ていた。

この汚水は太ももを完全に通過している。そりゃそうだ。直立している。

現在はひざを通過している模様。右足の方が若干早いか。

まぁ靴下まで約3分といったところか…

 

いや待て!ズボンに、滲みは出ていないか…どうだろうか。

触って確認したいところだが、どうやっても不自然になるであろう。

浮き出てしまうだろうな。茶色く。黒のズボンとはいえ、見えるであろう。

諦めも肝心ってことか。

 

しかし1番の問題は

 

「におい」だ。

 

においはどうだ。

しかしなぜだろう。こうなってしまった時の人間はここまで頭が冴えるものなのか。

目視確認をしなくても周りの様子が伺えている。

周りはこの事態にまだ気づいてはいないようだ。

 

しかし妙なのは、私の隣の彼だ。

きっと40代後半のいいおっさんだ。

先ほどから、鼻をすすり、やたら咳こんでいないか?息も徐々にではあるが荒くなっている気がする。

 

まさか…気づきやがったのか…?

 

距離を空けたい。だが、動けんだろう。この密室。そして、ケツにうんこって。

 

待て!冷静さを欠くな。考えるんだ。

現在、ふくらはぎで奇跡的に止まっているのか?靴下にひんやり感は得ていない。

では、距離を取るために一歩でも動いてみろ。完璧に靴下につくじゃないか。

 

「現状維持」

 

この選択を私は下した。

きっと、足首にまで到達してみろ。一気に臭くなるぞ。ここ一帯。

 

そんな時に、おっさん!なんで倒れたんだ!??

そんなに臭かったのか!?だったら、距離開けようよ〜。いや待て!俺のうんこでなのか…?

周りがザワついている。

 

隣に立っている私が、声もかけず、ただぼーっと見ていたらそれは不自然すぎる。

だが、しゃがむ事の出来ない現実。どうしたらいいんだ!

倒れたおっさんの隣にいた若い奴なんて、スゲーテンパってるじゃないか。

 

おい!若いの!お前もか?まさかこの状況はすごく私達は同士なんじゃないか?

 

なぜ仲間を求めたんだ。ふと我に帰る。

 

「大丈夫ですか!?」

 

マスクをしている女性が倒れたおっさんの元に駆け寄ってきた。

必死に声をかけている女性。

おっさんの隣でうんこ漏らしている私は、それを横目で見ている。

 

すごい罪悪感!なんだこれは!!

仮に私がうんこを漏らしていなかったとしよう。

そしておっさんが倒れた場合、必ず「大丈夫ですか!?」と声を真っ先にかけていたであろう。

だが現実は、かがめない今の私の状況。かがんだら悪臭とともに、うんこがズボンに浮かび上がり、「私はうんこ漏らしてます!」を公言し

 

私は晴れて「うんこマン」と称されることであろう。

 

そんなことは断じて嫌だ!それだけは、なんとか避けたい!

ウォォォォォオ!!

なんということだ。いよいよ出てきてしまった。

 

「においだ」

 

クソォ。自分が感じとってしまったら周り人も気づくに違いない。

消臭スプレーなんて持っているわけないし、仮にあったとしてもシューっと出来るわけない。

しかも隣に倒れているおっさん、必死な女性。

お?エチケットスプレーがジャケットの内ポケットにある。

いやいや!エチケットスプレーって。

うんこ漏らしてる私が、誰とエチケットするんだよ。私がだよ?エチケットしたところで、今日は誰もエチケットしてくれないよ。

 

何を言っているんだ私は。ふと我に帰る。

 

冷静になったっ私は、必死な女性に声をかけてみた。

 

「あの〜。車掌さんを呼んで対応してもらってはどうだろうか…」

すかさず女性は

「えっ?」

あれ?まさかの、パーデゥン?

声が小さかったのは悪かった。でも冷静に考えようよ〜。

つーか誰か呼べよ!倒れてる人いますよ!ってさ。

その前に、聞こえただろ!結構静かな時に声かけたよ!?

今お腹に力入れて声出したら、第2弾ぶっ放すことになるよ!?

いいのかな?テロリストか!私は。

 

「ん?なんかクサっ!」

 

あぁ〜あ。いったか。若者よ。君のもとに届いてしまったか。私の匂いが。

そして割りかし大きな声で、言ったね。今ね。

その若者の言葉に反応し始める人たちが続々と出てきた。

明らかに皆が見ている方向は私たちだ。

そして、その匂いの犯人は私であります。

ズボンは湿っているか?確認したいところだが、今ではない。

どう逃れる。この状況の最善の策はなんだ!

その時。

 

「倒れた衝撃かな…」

 

ボソッと聞こえた。あ、そっち?おっさんの方にいってくれた?

しかしまだざわつく車内。賛否両論を巻き起こしている。

 

「あの人のズボンどんな感じ?」

「仰向けだから、見えねぇ。つーか!クサ!」

「誰か普通に漏らしたんじゃないの?」

「え?嘘〜?この状況で?」

「テロリストの方〜。いらっしゃいませんか〜?」

「ウケんだけどww」

「www」

「倒れたおっさんのせいにしてまじ最低。」

「漏れテロリスト」

「www」

「消化器じゃなくて、消臭スプレーないの?」

「気持ち悪くなってきた…」

「なんなのこの状況w」

「おっさん大丈夫なの?その前に。」

ザワザワザワザワ……。

 

だ・れ・が!テロリストだと!??

大衆でうんこもらす事が趣味じゃねぇよ!!

行きたかったよ!トイレ!でも電車来ちゃったよ!?我慢できるかな?なんて、冒険したよ!

はい、乗りました!はい!乗ったと同時に出ました〜!

生理現象!!こ・れ・は!プレーじゃなくて、生理現象!!

それと誰だよ!「漏れテロリスト」って言ったやつ。

なんだ?漏れテロリストって。もうちょいヒネれや!!そのまんまか!

「漏れテロッ☆」って使えってことか!?「テヘペロッ☆」みたいに済むのか!?うんこ漏らしてしまった!あっ!こんな時は〜♪

「漏れテロッ☆」

 

全然可愛くねーだろがい!!!許されるわけないだろがいいいいい!!!

 

こんなに感情が揺さぶられたのは、いつぐらいだ。くそ。まだまだ未熟者ってことだな。

 

「静かにしてください!」ずっとおっさんのそばにいた女性はプッチンきてました。

 

「こんな状況下で、あなた達はまともな判断はできないんですか!?目の前で人が倒れているんです!なぜみなさんは、助けようと行動に移すことが出来なんですか?協力できないんですか?何を学んで今まで生きているんですか!?あなた達は!」

 

一気に静かになった。ようやく車掌さんが現れた。

 

「どうされました!?大丈夫ですか!?」

「この方が突然倒れてしまいまして…」淡々と説明をする女性。

 

車掌さんは仲間を呼び担架のようなものでおっさんを運び、間も無く到着する駅へ運ばれていった。

その中で当然、私はピクリとも動けなかった。いつの間にか、マスクの女性の姿もいなくなっていた。

 

「なっ、情けない。」

 

私がこんな状況でなければ、少しは手助けできたであろうに。ただただ、静かに自分のうんこを気にしていた事が猛烈に、情けなくなった。

一人一人に思いはあれど、その時に行動出来ないのであれば、その思いは思いのままなのだ。

これが現実か…現実は時に非情なものだ。と心で囁き、私は電車を降りた。

びっしょりな感覚を得ながら…

 

続く